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無駄吠えについて

無駄吠えについて.jpg犬のしつけの問題行動の相談で、一番多いのが無駄吠えです。犬が鎖に繋がれ庭で飼われていた昭和の時代に、無駄吠えという言葉はありませんでした。

何故なら、吠えることで番犬としての役割を果たしていたからです。庭で不審者に吠えて叱られる犬などいなかったことでしょう。

しかし、家族の一員として犬と一緒に暮らす時代になった今、番犬としての役割は終わり、犬が吠える行為は、最も困った問題行動として位置づけられようになりました。

「チャイムや音に反応して吠える」「気配を感じて吠える」「郵便屋さんや宅急便の人に吠える」など、
犬が吠えることには様々な理由があり、無駄に吠えているわけではありません。

そして、家の中での無駄吠えよりも相談が多いのが、散歩中の無駄吠えです。

散歩中に、犬が他の犬に向かって吠えかかる時、相手に対して強気に吠えているようにも見えますが
こうした他の犬や人に対して吠えて威嚇する犬たちに共通していることは、
社会化不足だったり、
自分に自信がなく怖がりの犬ということです。

そして、散歩中の無駄吠えの背景には、犬自身が持つ恐怖心にあるのです。「弱い犬ほど良く吠える」と、
昔の人はよく言ったものです。犬が他の犬や、人に吠えるようになるメカニズムを説明すると、
以下のようになります。

① 向こうから犬が来た
    ⇓

② 犬は自分の方へ近づいてきていると思っている
    ⇓

③ すれ違いざまに吠えたら、相手はこちらに近づかずに通り過ぎた
    ⇓

④ やったぁ! 追い払ったー!! 

このように恐怖心を感じ、怖がった方の犬が「警戒吠え」をしたところ、相手の犬が近づかなかったので、
吠えかかった犬は「自分が追い払った」と勘違いをしているのです。相手はただ通り過ぎただけなのですが、
結果的に、怖がった犬は「警戒吠えをすれば、怖い犬は近づかない」と学習します。

これは、郵便配達の人や宅急便の人たちに吠えることも同じで、彼らは犬が吠えた後に必ず立ち去るので、
犬は自分が追い払ったと思っています。そして、毎回郵便屋さんや宅急便の人が来るたびに吠えて撃退し、
負け知らずの連戦連勝を重ねた犬は強気になり、吠えるという行動がますます強化されていきます。
☜負の強化

さらに、もうひとつ厄介なことがあります。それは、自分の飼い主も一緒に守ろうとすることです。
この原因の多くは、飼い主が犬に対して取り続けた間違った対応にあります。間違った対応とは、
犬を自分より先に自由に歩かせ、犬の行きたい方について行くことです。

恐がりの犬を飼い主より先に歩かせてしまうと、歩哨としての役割を遂行し、
犬を発見するとすぐにロックオンし、相手が射程距離に近づくと一気に吠えかかってしまいます。

ちなみに、縄張り性攻撃行動と言います。

もうひとつは、「お友達でしょー」とか「怖くないよー」など、優しい言葉をかけてしまうことです。
吠えている犬にやさしい言葉は「ご褒美」となり、褒められていると勘違いした犬は、
もっと吠えるようになります。

「オヤツで気を引く」というのもありますが、これは犬が吠えるたびにおやつという「ご褒美」を
与えているので、犬は「吠えればオヤツがもらえる」と学習し、これも効果はありません。

また、飼い主は叱っているつもりでも、犬にきちんと伝わらないと、犬は飼い主が一緒に吠えていると
思い、どんなに叱ってもまた同じ場面で吠えてしまいます。結局、吠えるたびに叱るという飼い主の行動も
強化されていき、
一生叱り続けるという結果になってしまいます。☜これも負の強化 

では、散歩中の無駄吠えはどのように対処すればよいのでしょうか?以下、まとめになります。

~まとめ~

1.犬とすれ違うときは、飼い主の前を歩かせずに、必ず犬を横につけて管理する。
2.犬とすれ違う際は、名前を呼んでアイコンタクトを取りながら歩く。
3.ベンチなどで休んでいて、犬が近づいて来たときは「待って」をかける。
4.制御できない吠えは、しっかり叱責する。

1. と 2.の犬とすれ違う時の最悪の対処は、犬を座らせて相手が通り過ぎるまで
「待て」をさせることです。間違いではありませんが、これは飼い主も犬もその度に緊張してしまい、
散歩そのものが楽しくなくなります。参考までに1~3の対処法を、「対立行動分化強化」と言います。


いずれにしても、散歩中の無駄吠えの矯正ポイントは、犬が吠えてから対処しようとするのではなく、
「常に先手を打って吠えさせないこと」につきます。

後手に回るとスイッチを切ることが、とても難しくなります。前述した3つの強化法を繰り返し学習させ、
自分の犬に吠える機会を与えない様に根気よく犬に学習をさせれば、無駄吠えは必ず改善します。
そして、犬の無駄吠えが改善するかどうかも、やはり飼い主次第なのです。


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