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Visse's Blog エッセイ: 2022年12月アーカイブ

禁止のしつけとは?~犬に何が正解かを教えること~

禁止のしつけとは?~犬に正解を教えるということ~                     
 

ここでいう正解とは、「飼い主が望むこと(やってもよいこと)=正解」になります。そして、その飼い主の望むことを表す言葉が、「グ~ド!」と肯定することになります。そうして褒めてあげることで、犬(人も)はその行動を繰り返したいと思います。


反対に、犬が何か好ましくない行動を行った時は、「飼い主が望まないこと(やってはいけないこと)=間違い」となり、それを表す言葉が「ノー」と否定することになります。しかし、犬を叱るだけでは、良い行動が身に付くことはありません。

なぜなら、犬は反省と後悔ができないので、間違った行動をどう改めたらよいかはわかりません。ここが人間と違うところです。多くの飼い主が犬を叱ってしつけようとしますが、叱って犬がお利口になるなら誰も苦労はしません。


大切なことは、犬に「ノー」と間違いを注意したら、必ず正解を教え「グ~ド!」と褒めて終わることで、犬は飼い主が何を望んでいるのかを理解し、「駄目がきちんと理解できる子」に育っていきます。


犬が吠えた時に、「音のする缶を投げる」とか、何かいたずらをした時には、「マズルをつかむ」など、罰を与えるだけのしつけがいまだに残っています。しかし、何が悪いかの理由づけが出来ない犬を叱るだけでは、何が悪いかは永遠に理解できません。したがって、同じことに対して毎回叱らなければならなくなります。


では、正解を教えるとはどういうことでしょうか?

実際に練習してみましょう。まずオヤツを用意します。少し大きめがいいです。次に犬にリードをつけて短く持って下さい。そして、オヤツを犬の鼻先に持って行き、匂いを嗅がせたら、30センチほど前に放ります。

当然犬は食べに行きますので、リードで犬の動きを止めると同時に軽く「ノー」と注意して下さい。決してきつく叱らないで下さい。何故なら犬は悪いことをしている訳ではないからです。

オヤツを回収したら、もう一度オヤツを犬の前に放って下さい。犬がまたオヤツを食べに行ったら、また軽く「ノー」と注意をします。これを繰り返し行うと、早い子で3回目には学習し、オヤツを食べに行かなくなります。

何回目かに犬がオヤツを食べに行かなかったら、すかさずオヤツを拾って「グ~ド!」と褒めてからオヤツを与えて下さい。稀に10回以上繰り返さないと学習しない犬もいますが、大抵は5~6回繰り返すと食べに行かなくなります。


そして、これは拾い食いをしてはいけないという「禁止のしつけ」になります。勝手にオヤツを食べに行くことが間違いで、食べに行かないことが正解ということです。

犬は学習する生きものです。その学習とは、人も犬も何回も繰り返し教えることで理解し、身に付いていくのです。最後に、私が「盲導犬訓練士」多和田 悟氏から教わった言葉を紹介します。

「No」は教えなければならないが、「No」で何かを教えることはできない。


家庭犬のしつけとは?

犬にオヤツを使って「お座り」や「待て」などを教えることを、「オペラント条件づけ」と言います。同じようにイルカたちがジャンプをした後、トレーナーさんから必ずお魚をもらっていますよね。

トレーナーさんの指示で、イルカがジャンプし、その結果、お魚がご褒美でもらえたという流れです。ジャンプした後に、イルカにとって良いことが起きているので、今後トレーナーさんの合図で、ジャンプするという行動が増えるという理屈です。同じことを犬でやってみましょう。


飼い主が「お座り」と指示する →座る → その結果 →ご褒美(オヤツ)がもらえた。全く同じですね。このオペラント条件付けとは、動物に「何かをさせる」ということが目的で、トレーナーさんは、イルカをしつけている訳ではなく、イルカに「芸」を教えているということです。


イルカのジャンプを見て「よく訓練されているなー!」と思っても、「よくしつけられたイルカだなー」と、思われる方はいないのではないでしょうか?そもそもイルカがなぜジャンプするかと言うと、ジャンプした後に必ずお魚がもらえるからです。トレーナーさんは、イルカがジャンプをするたびに、必ず毎回お魚をあげていますね。☜連続強化スケジュール

これと同じことが犬のしつけでも見られます。ヴィッセのカウンセリングシートの質問項目に、


■オヤツがなくてもいうことを聞きますか?  □はい  □いいえ

という質問があります。そして、ほとんどの方が、☑いいえにチェックを付けます。

そうです!イルカも犬も、トレーナさんや飼い主のためにジャンプやお座りをしているのではなく、お魚やオヤツをもらうためにやっているという訳です。もし、トレーナーさんがオヤツをあげなくなると、イルカはジャンプをしなくなるでしょう。☜消去


しつけと訓練は違います。どんなに「お座り」や「待て」などを教えたからと言って、無駄吠えなどの問題行動を起こさない子に育つ訳ではありませんし、どこに出しても恥ずかしくない子に育つとは限りません。


僕が家庭犬のしつけで一番大事に考えているのは、「禁止のしつけ」です。禁止のしつけとは、拾い食いをしないとか、お散歩で他の犬に向かって吠えないとか、台所に入ってはいけないなど、日常生活でのルールを教えることです。


どんなにお座りや待てなどが上手にできても、散歩中に他の犬に吠えかかったり、オシッコをどこでも勝手にして周りに迷惑をかけていたら、意味がないと思います。犬のしつけは、犬の性格と個性によります。

たとえば、怖がりで臆病な子に一生懸命「お座り」や「待て」などを教えても、怖がりや臆病は克服できません。また、活発過ぎて落ち着きがない子に、一瞬芸程度の「待て」を教えても「我慢」は覚えません。子どものしつけも犬のしつけも、それぞれの子にあった「テーマ」があるのです。


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